「仲良し」

ミスガイ


 本来ならば、この写真を見ながら少しロマンチックな気分になれるような気の利いたエッセイが書ければ良いのであろうが、どうやらその才能は無いようなので、ここでは撮影のときの苦労話を書こう。

 「仲良し」なんていうベタな題をわざわざ付けるには訳がある。
この2匹、実は全く仲が良くない。きっと仲間意識というものはまるで持っていないのだろうが、全く我が道を行くといった感じで、自分の進行方法に相手がいた場合、なんと乗り上げてでも直進するぐらいである。なんとかこの2匹を可愛く、仲良さそうに撮りたい!! ……そう思って撮ったのでこの題にした。

 最初はこの2匹を置いて、簡単にヤラセで撮れると思っていたが、それはミルクで溶かした「ミロ」を飲みながら安いチョコを食べるぐらい恐ろしく甘かった……。結局この一枚の為に3本のダイビングとフィルムを費やしてしまった。

 なにがそんなに難しかったかというと、まず第一に動きが速い、信じられないだろうが、本当に速い!! 今までなめててスミマセンと謝りたくなるぐらい速い。なので、自分で置いて撮ろうなんて甘い考えはまるで通用せず、2匹を並べてカメラを構えている間にはすでに明後日の方向にいる……。

 第2に、このかわいい4つの目玉がなかなか上手く面で捉える事ができずピントが合わない……。

 第3に、すぐ砂に潜ろうとする……。

 これらはミスガイや同じ仲間のウミウシ写真を撮った事がある方なら今頃うなずいて頂けている事だろう。

 では、どのようにしてこの写真を撮ったかというと、まずはウネリが全く無い砂が舞い上がらない日、カメラを全部セットし、あとはシャッターを切るだけ状態で「決まった場所」に置く。

 この「決まった場所」というのは、ミスガイは砂地ならどこでも潜るわけではなく、潜りやすいポイントが必ずあるので、その場所の事。

 次に、ミスガイ2匹を少し離れた所に置き、その場所目指して歩かせる。
この時、大きさの違いで歩くスピードが微妙に違う事を考慮し、少し距離に差をつける。

 歩かせたらカメラを構えファインダーをのぞき、あとはまっすぐに歩いて来てくれる事を願いながらピントの微調整をする。

 ……これを何回繰り返しただろうか……。ミスガイの貝殻はとても薄いので、荒く扱うとすぐに割れてしまう。決して焦らず、押え付けたりしないで、のんびり気長に構える事が重要だ。

 そうすれば、いつかは必ず「仲良し」を見せてくれるはずである……。

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