「信じる」

アヤトリカクレエビ


 このエビを初めて見たのは4年前の2月。
伊豆海洋公園のナッソーダイブ・柳田さんのお店に勉強しに行ったときでした。
当時、このエビはまだ発見されたばかりで和名は付けられておらず、ダイバーの間ではク ルクルカクレエビと呼ばれていました。

 このエビを見たときは、「これだったらホストのナシジイソギンチャクも八丈には多くあ るし、絶対いるな」と思いました。
さっそく八丈に帰って、自分の頭のなかに入っているナシジイソギンチャクの場所という 場所、新たに発見した場所、とにかく探しまわりました。探して探して、おかげでシンイボテガ ニという同じイソギンチャクに住むカニは初記録したのですが、クルクルだけはどうしても発見 できませんでした。

 あまりにも見つからないのでまず考えたのは、「海洋公園では冬の時期にみられるという事 なので、八丈ではきっと水温が高すぎるのではないか、だったら冷水塊の時がチャンスなのでは ないか」という事でした。

 結果は大ハズレ……。冷水塊の凍りつくような寒さのなか、けっこう探したのですが、残念 ながら発見できず、だんだんとめげ始めていました。

 その後、このクルクルカクレエビは千葉県博の奥野氏によりアヤトリカクレエビという和名 が提唱され、図鑑などにも登場し、その存在はかなり日本中に知れわたるようになりました。

 おかしい、絶対にこれだけホストがあっていない訳がない!! 再び闘志が湧き、もし出る としたらこの場所しかないと信じた4箇所のナシジは近くに行ったときには必ず確認するように なりました。

 そんなガイド生活のまま4年、もちろんその間には他の色々なものと出会えましたが、この アヤトリとだけは出会えることなく過ごしていました。

 が、最近になって、あるゲストが海外で撮ってきた写真や海外の写真集などにこのエビが 写っているではないですか……。あれ? あれ? もしかしてこのエビは寒いところだけじゃない! 逆に暖かい海に多く、ただ情報がなかっただけだ、だとしたら、今の八丈の潮なら絶対にいる!  いるとしたらあの4箇所のどれかだ!! そう確信しました。

 そして9月16日、その日のガイドのリクエストでちょうど近くまで行けたので、ずっと 信じて押さえていた4箇所の1つを確認しました。

 その一発目、「ギャー〜〜〜、いた、いた、いた〜」 そうです、確かに目の前には探し続けたあのエビがペアでいたのです。思わず水中で叫んでしまい、 隣でキンギョハナダイのきれいな群れをビデオで撮っていたゲストを無理やり呼びつけ、強引な見 せ方をしてしまいました。

 後で、「私としたことが取り乱しまして……」と謝ろうと思ったのですが、「いや〜、スゴイ 柄のエビですね〜」と喜んでいてくれたので一安心。
 
 今回、このエビを見つけれた事は非常に嬉しいのですが、実は、まだまだ同じように狙ってい るエビ・カニ、ウミウシ、魚は多くいます。チェックポイントもあります。今度、僕のガイドを受け たときに、その事を思い出して動きを見ているとけっこう面白いかも。

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